住宅の省エネ基準は『適合義務』に!ポイントとなる制度を解説

省エネのイメージ

『省エネルギ―住宅』は、家づくりのトレンドの一つ。
快適で暮らしやすい上に、光熱費の節約にもなることから、積極的に取り入れられています。
しかし、省エネ住宅の普及は、住む上でのメリットによるものだけではありません。

SDGsや、カーボンニュートラル宣言といった、“持続可能な社会の実現に向けた取り組み”が求められる現代社会。
住宅業界にも積極的に取り入れられています。
省エネ基準は2025年より『適合義務』となり、これからの家づくりに欠かせないものとなるでしょう。

この記事では、暮らしやすい住宅をプランニングするために、省エネに関わる基準や制度についていくつか紹介しています。ぜひ理解を深めてみてください。

目次

省エネルギー住宅の主な性能

省エネルギー住宅は、家庭内のエネルギー消費のうち約3割を占めるとされる“暖冷房のエネルギー消費”を抑えられます。
省エネルギー住宅に大きく影響を与えるのは、主に以下の3つの性能です。

  1. 断熱
  2. 気密
  3. 日射遮蔽

この他、換気や通風などの要素も総合的に機能させることで、より高い省エネ性能が得られます。

断熱性能

寒さや暑さの原因となる熱は、壁や窓、床、屋根を通して住宅の外から中へ伝わります。
夏涼しく、冬あたたかい住宅を実現するには、室外と室内の熱移動を可能な限り減らすことが必要です。
断熱性能は『UA値』で表され、値が小さいほど省エネ性能に優れます。

2 気密性能

冬場、室内にすきま風がふけば、室温が下がりやすくなることは想像しやすいでしょう。暖房で消費するエネルギーを増やさないよう、住宅の隙間を減らすことを『気密性を高める』と表現します。
気密性は『C値』で表され、値が小さいほど気密性が高いことを示します。

ただし、合わせて換気も計画しなければ、高い気密性があだとなり“新鮮な空気が取り込めない住宅”に。
シックハウス症候群や結露、カビの発生を抑えるためにも、気密性能と合わせて換気にも気を配りましょう。

3 日射遮蔽性能

夏場の暑さの大きな要因は、太陽からの日射熱。
日射熱をさえぎり、冷房に使われるエネルギーを減らすことが必要です。
日射遮蔽性能は『ηAC値』で表し、省エネ性能が優れるほど数値は小さくなります。

住宅の省エネ基準

住宅の省エネ基準は、省エネ法に対応して昭和55(1980)年に制定された歴史ある制度です。
時代の移り変わりとともに改正を重ね、よりよい内容へと強化されています。

現在の省エネ基準は、以下の2点が評価の対象となります。

  1. 外皮性能
  2. 設備機器等の一次エネルギー消費量

また、省エネ基準は国内における基準以外にも、都道府県で独自に制定された基準も存在するため、混同しないよう注意しましょう。

ここでは、省エネ法に基づく省エネ基準について解説します。

1 外皮性能を評価する基準

外皮とは、住宅の外周部分を指し、具体的には外壁や屋根、窓などが挙げられます
日本は北と南で地域の温度差が大きく開きがあることから、求められる外皮性能は地域ごとに異なる点に注意しましょう。

地域区分は市町村ごとに8種類に分類され、1~2は北海道を中心とした寒冷地、8は鹿児島の特に温暖な地域や沖縄が該当します。

断熱性能を示す「外皮平均熱貫流率UAユーエー)」と日射遮蔽性能を示す「冷房期の平均日射熱取得率ηACイータ・エー・シー)」の基準値は以下の通りです。

住宅における外皮性能
スクロールできます
地域区分12345678
UA
[W/(m2・K)]
0.460.460.560.750.870.870.87
ηAC3.02.82.76.7
出典:国土交通省|住宅における外皮性能(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001443058.pdf
  • 外皮平均熱貫流率(UA)
    • 室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標
    • 建物内外温度差を1度としたときに、建物内部から外界へ逃げる単位時間あたりの熱量を、外皮面積で除したもの
    • 値が小さいほど熱が出入りしにくく断熱性能が高い
      ※換気による熱損失は除く
  • 冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)
    • 太陽日射の室内への入りやすさの指標
    • 単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で除したもの
    • 値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高い

一次エネルギー消費量を評価する基準

一次エネルギー消費量は、以下のエネルギー消費量を合計して算出します。

  • 暖冷房設備
  • 換気設備
  • 照明設備
  • 給湯設備
  • その他、家電等の設備

省エネ基準は、実際の建物の設計仕様で算定した『設計一次エネルギー消費量』が、基本仕様で算定した『基準一次エネルギー消費量』以下となるよう定められています。
地域区分や部屋の構成、用途、各室の床面積、階高等は、共通条件下での算出が必要です。

ZEH(ゼッチ)住宅

太陽光パネル

ZEH住宅とは、省エネに加え、エネルギーを作り出す“創エネ”を取り入れ、エネルギー収支を0にすることを目指した住宅。
具体的には、太陽光発電や蓄電池を導入し、消費電力をまかなうような取り組みがされています。エネルギーを効率的に利用できる設備の導入も重要です。
net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が名前の由来となります。

日本では、2030年度以降新築される住宅において、以下の政策目標が掲げられています。

  • ZEH基準の性能の確保
  • 新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置

今後は省エネだけでなく、『創エネ』にも力を入れた住宅が増えていく見通しです。

住宅性能表示制度

住宅の購入時、外観や間取りを見ただけでは、どのような性能があるのか分かりづらいもの。
そこで消費者が住宅を選ぶ基準として、『住宅性能表示制度』が一つの指標となります。

住宅性能表示制度は、第三者機関が正しく性能を評価することで、消費者が安心して住宅を購入できる市場をつくることが目的です。
10分野の性能表示項目があり、『省エネルギー対策』についても評価の対象となっています。

省エネルギーについて評価される内容

住宅性能表示制度において、省エネ性能は以下の2点で判断されます。

  • 断熱等性能等級
  • エネルギー消費量

断熱等性能等級

暖房使用時のエネルギーの削減を考慮した、断熱化等による対策の程度を表します。
断熱等性能等級は1から7まであり、等級4が現行の省エネ基準に相当。
等級5はZEH基準、等級6~7は省エネ基準比でエネルギー消費量30~40%となる上位等級して定められています。

エネルギー消費量

住宅で使う電気、灯油、ガスなどの二次エネルギーを、石油、石炭、天然ガスなどの一次エネルギーに換算した消費量をはかります。
等級4が省エネ基準であり、等級5は省エネ基準から10%削減したもの、等級はZEH基準に相当します。

2023年 省エネを推進する補助金制度『こどもエコすまい支援事業』

省エネ性能を取り入れた住宅を取得するにあたり、『こどもエコすまい支援事業』の補助金が活用できます。
新築とリフォームそれぞれで申請可能です。

新築住宅の場合はZEH住宅で1戸あたり100万円の補助が受けられます
ただし、対象者は子育て世帯、または夫婦のいずれかが39歳以下の世帯に限られるなどの要件があるため確認が必要です。

リフォームの場合、1戸あたり上限金額30万円の補助金が受けられます。
子育て世帯、または夫婦のいずれかが39歳以下の世帯では、上限金額は45万円、既存住宅購入を伴う場合は60万円となる点に注意してください。

環境省における、戸建住宅ZEH化等支援事業の補助金は、2023年1月6日に受付が終了しました。
住宅購入を検討する場合には、最新の動向に注視しておきましょう。

インテリアにも省エネを取り入れて

省エネ性能を高める工夫は、住宅の構造や設備に限らず『インテリア』でも可能です。
例えば、冬場の窓辺から侵入する冷気対策には、カーテン選びにひと工夫を。

  • 遮熱・断熱効果の高いカーテンを取り入れる
  • 床に近い長さにして、窓辺から室内に侵入する冷気を防ぐ

住宅の『構造や設備』だけでなく、『内装』からも暮らしやすさを叶えてみてはいかがでしょう。
既存住宅であっても、インテリアなら手軽に取り入れられます。

省エネ性能を高めた家づくりを、ぜひインテリアにもこだわって楽しんでください。

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