インテリアコーディネーターを目指して資格の勉強を始めてみたものの、いざ取り組んでみると建築に関する専門的な内容が多く「難しくて理解できない」「すぐに忘れてしまう」という状況に陥っていませんか?
学習効率を上げて記憶を定着させるには、ただ丸暗記するのではなく関連情報と結びつけて覚えることが大切です。
この記事では、インテリアコーディネーター資格一次試験で頻出の「木造軸組構法(在来構法)」について、得点源となるキーワードや出題の背景・意図、テキストを読むだけではイメージしにくい実務との関連をご紹介します。
資格試験の勉強を通して、インテリアコーディネーターとして仕事をするうえで役立つ建築の知識・用語を身につけましょう!
- 海外インテリアと、間取り・色彩計画が好きなインテリアコーディネーター
- 大手住宅メーカー勤務・家具ショールーム勤務・フリーランス 多様な働き方を経験
- 資格:インテリアアカデミー認定講師、インテリアコーディネーター、整理収納・色彩等
インテリアコーディネーター〈一次試験〉過去5年間の出題傾向
インテリアコーディネーター資格の試験範囲には〝インテリアの構造・構法と仕上げに関すること″があり、「建築」の構造・構法についての知識も問われます。
2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | |
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木造 | 1 | ※ | 1 | 1 | 1 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 |
鉄骨造(S造) | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
表中の「1」は、大問1問(小問4問)出題
表中の「※」は、小問1問出題
木造については表の通り毎年出題されていて、特に、木造軸組構法(在来構法)は頻出です。
しっかり理解して確実に得点しましょう。
木造軸組構法(在来構法)とは? 他の木造住宅との違いもチェック
木造軸組構法(在来軸組構法 / 在来構法)
- 日本の伝統的な構法
- 木製の柱と横架材(梁や桁などの水平材)を軸として組み上げるつくり方
- 柱と柱の間に入れる斜材「筋かい」で建物を補強する
枠組壁工法(ツーバイフォー工法 / 2×4工法)
- 北米(アメリカ・カナダ)で発達し、日本には明治時代以降に導入された
- 枠材に構造用合板を釘などで打ち付けて壁や床を組み立てる工法
- 「壁」で支える工法で、寸法や釘などの種類・間隔、すべてに基準が定められている
- 「2×4」とは、木材の断面寸法2×4インチ(50.8㎜×101.6mm)が由来だが、実際の寸法は38×89mm程度
プレハブ工法
- 英語Prefabrication(あらかじめ造る・組み上げる)が由来
- 工場であらかじめ部材を組み上げることで、現場での組み立てを簡略化したつくり方
- 木質系プレハブは、2×4工法の壁パネルや床パネルを中心にプレハブ化したものが主流
受験者必見!過去問から分析「在来軸組構法」よく出るキーワードと攻略ポイント
① 筋かい
日本は、世界でも有数の地震多発地帯で、台風も毎年発生します。
そのため建物には、地震力や風圧力のような「水平力」に耐えられる構造が必要で、「筋かい」はその役割を果たす重要な部材のひとつです。
筋かい【すじかい】
- 軸組の変形を防ぐために、骨組の対角方向(柱と柱の間)に入れる補強材(斜材)
- 耐力壁として、水平力による変形を防ぐ
- インテリアコーディネーター資格試験には、耐震性の観点から「筋かい」の出題が多く見られます。
+α 合わせて覚えよう!
木造建築の水平力に対する耐力は、柱と柱の間に横に入れる「貫」から、対角(斜め)に入れる「筋かい」へと変化してきました。最近では、「筋かい」の代わりに「構造用合板」などを用いて、耐震性を向上させる工法も増えています。
床組では、根太【ねだ】の代わりに厚物合板を用いることで、構造強度を確保する工法が増えています。
〈関連〉インテリアコーディネーターの仕事と「筋かい」
木造軸組構法(在来構法)は、間仕切り壁の自由度は高い一方で、「家を支えている柱」や「筋かい(または筋かいが入っている壁)」は構造上取り除くことができません。
そのためインテリアコーディネーターには、新築・リフォームともに構造体を活かした家具配置やデザイン提案が求められます。
柱や筋かいは図面からも読み取ることができますので、事前にしっかり確認して計画するようにしましょう。
一般的には2階より1階に、耐力壁(筋かいが入っている壁)は多くなります。
② 火打ち梁 ・火打ち土台
火打ち材【ひうちざい】
- 水平方向の力に対する抵抗力(剛性)を持たせる斜材
- 隅角部に設置する部材で、火打ち土台【ひうちどだい】と火打ち梁【ひうちばり】がある
- 火打ち梁【ひうちばり】は、水平面の剛性として軸組最上部に配置する
- 火打ち材は「筋かい」同様、耐震の観点から出題されることが多い部材です。
③ 通し柱・管柱
通し柱【とおしばしら】
- 土台から軒桁【のきげた】までを一本物で通した柱(1階から2階まで通じる柱)
- 標準的な階高の住宅の場合は、120mm角を用いる
管柱【くだばしら】
- 各階ごとに、胴差しや梁などの横架材の位置で区切られた柱(1階分の柱)
- 標準的な階高の住宅の場合は、105mm角を用いる
胴差し【どうさし】
- 建物の外周(1階と2階の間)に水平に配置する横架材
- 管柱を繋ぎ、2階の壁や床組を支える役割がある
- 用途(高さ)別の柱名称がよく出題されます。「管柱=1階分の高さ」「通し柱=2階分の高さ」
〈関連〉一緒に覚えよう!木材の「元口」と「末口」
- 樹木の根に近い、太い方を元(または元口)という
- 板目板の場合、一般に木目が開いている方が元
- 柱は、元口を下にして施工する
末【すえ】・末口【すえくち】
- 幹が伸びていく方(梢に近い方)を末(または末口)という
- 製材した木材をストックする場合は、末口を下にして保管する
- 根・梢それぞれに近い名称、柱として用いられる場合の向きがよく出題されます。
なぜ頻出?「木造・在来軸組構法」出題の背景を知って記憶を定着させよう!
過去の出題傾向からも分かるように、「木構造」や「木造軸組構法(在来構法)」は一次試験で毎年出題されていて、重要な得点源になる可能性が高いと言えます。
しかし、なぜインテリアコーディネーターを目指したいのに、建築学の勉強をしなくてはいけないの?と思った人、苦手分野だからできることなら構造・構法の勉強は避けてインテリアコーディネーター資格試験に合格したい…と思った人もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、なぜ木造・木材に対する問いが、インテリアコーディネーター資格試験で頻繁に出題されるのか、その背景を探ってみましょう。
出題の意図や目的が分かれば、きっと勉強が楽しくなるはずですよ!
関連する情報と結び付けて、さらに記憶を定着させましょう!
1.「木材」は、日本で最も使われている住宅建材
まず知っておきたい事実として、日本で最も使われている住宅建材が「木材」であるということです。
日本列島は高温多湿の気候で樹木の生育が早く、木材が容易に手に入ることから、日本の建築のほとんどは木材によって造られてきました。
現在でも、国内で生産された製材のほとんどは、住宅の構造材や下地材等の建築用として使用されていて、低層住宅(1~3階建て)の木造率は約8割を占めているというデータもあります。
新築戸建て住宅における木造住宅の割合(木造率)は、なんと91%。
工法別のシェアは、木造軸組構法(在来構法)が79%、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)が19%、木質プレハブ工法が2%となっています。 (出典:令和3年度 森林・林業白書)
木材は、日本に限らず多くの国で古くから使われていますが、現在でも私たちの住まい・暮らしに欠かせない材料ということが分かります。
2.「木造住宅」は、インテリアコーディネーターが活躍する主要なフィールド
建築データが裏付けているように、木造住宅は生活の基盤となる「衣・食・住」のうち「住」すなわち「日本の住宅」を語る上で必要不可欠な知識です。
新築戸建て住宅のほとんどが木造住宅という事実からも、インテリアコーディネーターとして木造住宅に関わる可能性は大いにあります。
インテリアコーディネートの舞台となる住宅がどのようにつくられているのか、そして、日本で受け継がれ現在も主流の建築構造・材料について学ぶことは、「住まいに携わる仕事」をするインテリアコーディネーターにとって必要なプロセスと言えます。
3.改めて確認!インテリアコーディネーターの役割とは?
「住空間」に携わるインテリアコーディネーターは、見た目の印象や美しさだけではなく、安全・快適・機能的な内部空間を提案する役割を担います。
いくら素敵なコーディネートを手掛けても、前提となる建物の安全性が保たれていなければ本末転倒。
住宅の構造や仕組みを知らないのは「木を見て森を見ず」の状態なのです。
住宅の構造、さらには日本の気候風土や災害対策を理解し、人々が安心して居心地よく暮らせる空間・住まいを手掛けることが、インテリアコーディネーターには求められています。
また、インテリアコーディネーターは、お客様と現場の間に立って仕事を進める「調整役」の役割も担います。
建築の専門知識や用語は、より良い空間づくり=住まいづくりに欠かせない要素なのです。
〈豆知識〉家づくりの節目「上棟」
家づくりの工程には節目があり、そのうちのひとつが「上棟」です。
上棟【じょうとう】とは、柱や梁などで軸組が構成された後、小屋組の頂部に棟木【むなぎ】と呼ばれる横架材を取り付けることを意味します。
屋根の構築に欠かせない「棟木」が無事に取り付けられたことを祝って「上棟式」が行われることもあるほど、家づくりにおいて重要な工程・節目です。
地域によっては、棟上げ【むねあげ】、建前【たてまえ】、建舞【たてまい】などとも呼ばれ、骨組みが完成した段階を意味することもあれば、屋根が完成した段階を意味することもあります。
- 屋根を支える「小屋組」の頂部の横架材
- 荷重を小屋束や梁に伝える役割がある
基本的には木造軸組構法の工程ですが、鉄骨構造などでも骨組みや屋根が完成した段階を「上棟」と表現することがあります。
「上棟」は、新築・建替住宅を扱うハウスメーカーや工務店などの社内ではもちろん、お客様に対しても使われる用語で、物件の進捗を確認するための重要なマイルストーンです。
家づくり全体の工程を把握したうえで、スケジュールを管理することが求められるインテリアコーディネーターには、建築の知識・用語は必要不可欠です。
まとめ
インテリアコーディネーター資格一次試験で頻出「木構造」「木造軸組構法(在来構法)」への理解は深まりましたか?
建築の知識や用語は馴染みがなく難しく感じてしまいがちですが、出題の背景や実務との関連を知ることで記憶が定着し、「資格取得のための勉強」から「仕事で使える知識」にレベルアップすることができます。
今回ご紹介した、試験で得点源となるキーワード・攻略ポイントを参考に合格を目指すとともに、インテリア・建築業界での活躍の場を広げてください。
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